War in Heaven Part③~Sugar and spies~
- gravitationalconst
- 2024年12月16日
- 読了時間: 9分
第3回となる今回は、HAWKSの反撃と、HKの諜報活動、そしてSYNDE連合に生じたほころびについて語ろうと思う。
少々長くなるが、お付き合いいただければ幸いだ。 (文責:Metallica Netherland)
◆タカがレシャクでやって来る SYNDE連合はHAWKSのファームを攻撃する「兵糧攻め」とでも呼ぶべき戦略を取ったのは先述した通りだ。
HAWKSの戦略はこれとは対照的に、SYNDE連合の主要組織のホームWH、あるいは攻勢のための拠点(ステージングWHと呼ばれる)をピンポイントで叩くというものだった。
SYNDE連合の一員であるSugerのホームにHAWKSのフリートが現れたのは4月上旬のことだった。
6隻のレシャクで構成されたフリートが、Sugerのストラクチャへの攻撃を始めた。
「戦争中にも関わらず」と言ってしまうのはいささか辛辣だろうか。
Sugarのメンバーのうち、この時ホームにいたのはごく一部だった。
メンバーの多くが金策、あるいは戦争と関係の無いローミングフリートに出ていたという話もあるが、実際のところは分からない。
少数で敵の拠点にのこのことやってきたHAWKSのフリートを、Sugerはその時拠点にいたメンバーだけで迎え撃った。
レシャク、バールゴーン、マカリエルといった戦艦群と、ロジを担当するガーディアンやネストル。
さらにはナグルファー海軍仕様にアポスルと、キャピタル艦まで投入した。
船のサイズも防御方式もバラバラのキッチンシンクフリートがHAWKS艦隊に襲いかかった。
合計でキャピタルを含め23隻。6隻のレシャクをたたきつぶすには過剰すぎる戦力だ。
そう、敵が本当に6隻だけだったならば。
Sugerにとってはまさに悪夢だっただろう。6隻のレシャクはSugerの駐留艦隊を戦場に引きずり出すための囮だった。
交戦開始直後、HAWKSの代名詞となっているナイトホークの群れが、Dスキャンのウィンドウを埋め尽くした。
重厚なシールド艦隊が、たちまち哀れな獲物を取り囲む。
35隻のナイトホークを筆頭に、その数は70隻にも上った。
Sugerはアポスルやナグルファー海軍仕様を含む多数の艦艇を失い、35Biskの損害を出した。
対して、HAWKSの損害はセイバー2隻のみに留まった。
Sugarにとって、金銭的な損害はさしたる問題では無かった。
深刻だったのは、防衛に必要なパイロットを失ったことだ。
カプセルを破壊された場合、プレイヤーはあらかじめ設定されたホームステーションに転送されるが、WH内のストラクチャは対象外だ。
ジタやアマーのステーションで目覚めたカプセラが、敵に包囲されたWHに戻ることは非常に困難だ。
Sugerが自分たちの力だけで本拠地を取り戻すことは、ほとんど不可能な状況となった。

◆泣きっ面にカニ
危機に陥った時こそ、その組織の地力が試されるものだ。
その点、包囲下のSugerでは組織の脆弱性を露見するような出来事が連続して発生し、まさに最悪と言っていい状況だった。
どんな組織であっても協調性の無い人間が一定数いるのは仕方が無いことではあるのだが、Sugerの場合、HAWKSに本拠地を焼かれている最中に離反者が出たのだからたまらない。
このプレイヤーは、コーポ共有の艦船やMODなど30Bisk相当の共有財産を持ち逃げしたばかりか、WH組織にとっての命綱である共有ブックマーク(WHの位置や戦闘用のランディング地点などの座標)を全て削除して出奔したのだ。
この背信行為は半ば衝動的なものだったようだが、遅かれ早かれこうなるだろうという予兆はあった。
一つは、開戦当初から、SYNDE連合への参加に不満をもっていたメンバーが少なからずいたことだ。
生粋のワームホーラーであれば、ヌル勢力と結託した事への嫌悪感を持つのも自然なことであっただろう。
そして、より深刻だったのが、金策にしか興味がないプレイヤーの存在だった。
WHのストラクチャをめぐる攻防では、非常に多くのマンパワーが必要になる。
危機を乗り越えるのに人手が必要な場面でも、彼らが気にかけるのは「自分の資産を安全に退避できるか」と「いつになったら金策を再開できるか」だけだ。
端的に言えばフリーライダー、より悪し様に言えば寄生虫である。
日常的にPvPが発生することが前提のWH組織では、こうしたプレイヤーは敵味方を問わず、「farmer」などと呼ばれて侮蔑の対象となることが多い。
非常時には足手まといにしかならないこの手の「駄々っ子」をなだめすかす、あるいはそもそも組織に入れないという対応を取らなかったSuger幹部の責任は重い。
Sugarの内部は大混乱だったようだ。
それでも、大きな組織には非常時を乗り越えるのに秀でた人材がいるのもまた事実で、この時も、あるプレイヤーが事態の収拾を任された。
このプレイヤーはSugerに入ってからまだ3カ月ほどと日は浅かったが、非常に優秀で幹部からも一目置かれていたようだ。
ただ、彼には一つだけ、組織にとって致命的な問題があった。
彼はHKのスパイだったのだ。
HAWKSとHKの連合軍を相手にした戦争の最中に、そのスパイに全権を委任すれば何が起こるか。
4月14日、日曜日の朝。
SugerのメンバーがEVEにログインした時、WH内で攻撃を受けずに残存していた全てのストラクチャがHKの持ち株会社へと移管されていた。
自分たちの拠点だったフォータイザーに、HAWKSとHKの連合艦隊が我が物顔で駐留していたのだ。
OVを赤く染める敵の艦隊は、刻一刻と増加していった。
その様子を、残されたSugerのメンバーはただ眺めることしかできなかった。
◆サイラスの決断
事態はもはやSuger単体では収拾が付かなくなり、SYNDEの本隊が動き出した。
SYNDEのCEO・Cyrus Kurushは、Vultureを中心にしたHAWKSの長距離砲撃ドクトリンに対抗するために、新たにサイクロンFIを中核としたドクトリンを投入した。
SYNDEは150隻のサイクロンFIを中心にした艦隊を送り込み、再度HAWKSとの艦隊戦に臨んだ。
この戦いにヌル勢力は参加せず、WH勢力同士での戦闘が始まろうとしていた。
両者は数の上ではほぼ互角だったが、HAWKSフリートがほぼサブキャップのみで構成されていたのに対し、SYNDEフリートはWH内に残存していたSugerのキャピタル艦15隻を擁しており、火力ではHAWKSを圧倒していた。
交戦開始直後は互角に見えた戦況だったが、徐々にSYNDE連合が押されていった。
FCの能力か、フリートメンバーの練度の差か。
勝利が難しいと悟ったSYNDE連合は、目標をSugerのキャピタル艦を脱出させることに切り替えた。
固定穴が一度に通せるキャピタル艦は3隻まで。敵と制空権を争いながら、繰り返し穴を開けては潰していくしかない。
残念ながら、この試みはほとんど失敗に終わったと言っていいだろう。
連絡ミスによって、HKとの戦闘の際に見られたような事故が再び発生したのだ。
それも、より酷い形で。
なかなか出ないFCの指示を待ってWH前に整列するSYNDE・Sugerの連合艦隊の面前に、HAWKSの穴潰しCVがランディングした。
この時、何を思ったか、SYNDE連合のDNが指示を待たずに穴をくぐった。
混乱のさなか、HAWKSのCVは穴を往復し、完全に潰し終えたうえで敵艦隊に捕まることなく離脱した。
報連相の不徹底と判断の遅れによって、先ほどまで穴があった空間に多数のキャピタル艦が取り残されるという地獄が顕現した。
最終的にこの戦いでは、HAWKS側が48Biskの損害に対し、SYNDE連合は144Biskの損害を出した。
Sugerは4隻のDNを脱出させたようだが、その代償は大きかった。

◆遠すぎた穴
攻撃を受けたSUGARのストラクチャーのリーンタイマーが刻々と進んでいく中、SYNDE連合はHAWKS艦隊を撃退する試みを続けた。
SYNDE連合は戦力温存を第一方針とした。
具体的には、固定穴のホールコントロールを争うことは避け、増援の投入はrage rollingによってのみ行うこととしたのだ。
HAWKSサイドもこの間、WH内に複数のDNを運び込むことに成功していた。
SugerをこのWHから完全に追い出すためには、2時間ほどの間に複数のストラクチャを破壊する必要があったのだが、DNがあればそれが可能だった。
DNの火力があれば複数のストラクチャを同時進行で破壊できるだけでなく、サブキャップ艦隊をその間自由に動かすことができる。
だが、勝利の女神はいつもきまぐれだ。
タイマーまで数時間というタイミングでHAWKSに災難が降りかかった。
「A009」WHが発生したのだ。
A009は約16時間持続するFGサイズのワームホールで、プレイヤーの手で潰すのは現実的にはほぼ不可能と言ってよい。
そのうえ、Kspaceへの接続ルートも豊富だ。
HAWKSが最も恐れるシナリオは、このWHからInitiativeの大艦隊が襲来することだ。
そして、SYNDEがこの機会を逃すはずはなかった。
SYNDE連合にはこの時、3つの軍集団を投入できる可能性があった。
ひとつは穴の中に残されたSuger艦隊約50隻。
もうひとつはRage rollingによって投入されるであろうSYNDEの本隊。
そして、A009の発生によって投入が可能になった、Initiativeのステルス爆撃艦300隻だ。
仮にこれらを全て投入することができれば、SYNDE側の戦力はHAWKSの3倍以上となる。
勝利は約束されたも同然だ。
ただ、これを容易に許すほど、HAWKSは生ぬるい相手ではない。
SYNDEのステージングWH「ワッフル」の中には、既にHAWKSの穴潰し用CVが潜伏していたのだ。
もちろん、穴の反対側となるSugerのWHにも、同様の穴潰しCVが待機している。
運良くrage rollingが成功したとしても、SYNDE本隊のWH通過はほとんど不可能な状況だった。
HAWKSにとって残る最大の脅威はInitiativeの艦隊であり、忌々しいA009WHだった。
実際、Initiativeのステルス爆撃艦隊は、WHのすぐ向こう側まで到着していた。
HAWKSは敵の侵入を防ぐため、穴の周囲にバブルを展開し、スマートボムを満載した戦艦で取り囲んだ。
運良くこのキルゾーンを突破した艦があったとしても、外周に配置された狙撃艦によって撃ち落とす二段構えだ。
この様子をInitiativeのスカウト艦は全て見ていたが、彼らにできることは何も無かった。
穴の前に鎮座するHAWKSの艦隊を誰かが排除しない限り、穴をくぐったところで、得られるのは自分たちの死体の山だけだ。
結局、増援は到着せず、Sugarの拠点は完全に破壊された。
HAWKSが破壊した船や建造物は確認できるだけで約150Biskに上った。

裏取りのできない情報ではあるが、この他に約200Bisk相当の戦利品を接収したという話もある(WHでストラクチャが破壊されると、その中身は誰でもアクセスできる状態で宙域にばらまかれる。WHにアセットセーフティなどという生易しい機能はない)
◆同盟のほころび
SYNDEの増援はなぜ機能しなかったのか。
HAWKSが一枚上手だったのか。それとも単なる不運の積み重ねか。
これは筆者の私見だが、SYNDEとInitiativeの間には、この戦争への意欲に大きな温度差があったように思う。
Initiativeには、Rage rollingを繰り返したSYNDEのように、自ら目標WHへのルートを構築しようという意欲は薄かった。
FGサイズのWHが発生するという望外の幸運があって初めて参戦の準備をするというのでは、命運を預ける「切り札」としてはあまりにも心もとない。
遊びの誘いに対する「行けたら行く」という返事の方が、まだいくらか信頼できるだろう。
いかに強大な戦力であっても、戦場にたどり着けなければ何の意味も無い。
Initiativeには絶大な数の力こそあったが、裏を返せば本当にそれだけだった。
確実に戦闘が発生する状況かつ、こちらからの丁重な送迎がなければ、戦場にお越しいただくことすら叶わない「お客様」でしかなかったのである。
そこには、かつてHKを葬った時のような執念や情熱は無かった。
このSYNDEとInitiativeの温度差が、連合軍に決定的な破滅を招くことになる。
次回は戦局を決定づけたHAWKSの一大反攻作戦「ワッフル侵攻」について解説する。
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