War in Heaven ~Part②好敵手の帰還~
- gravitationalconst
- 2024年11月26日
- 読了時間: 6分
SYNDE連合とHAWKSの戦争を振り返る連載の第2回となる今回は、HAWKSサイドが攻勢に転じるに至った経緯について解説しようと思う。
前回の投稿からずいぶんと時間が経ってしまったことをお詫びしたい。
新たな登場人物が増え、少し昔話も多くなるが、お付き合いいただければ幸いだ。
(文責:Metallica Netherland)
◆覇者、再び立つ SYNDE連合に参加していたWH勢力、「Atrax Hollow」の本拠地が破壊されたのは、開戦からわずか1週間後のことだった。
HAWKS陣営が防戦一方だったこの時期、誰もが予期しないタイミングでの戦闘だ。
AtraxのC5WHに現れたのは、LeshakとLegionを中心にした70隻超の重厚なアーマーフリート。
彼らはAtraxのストラクチャやDN(攻城艦)など約90B相当の資産を、一方的に破壊・撃沈していった。 Battle Report Tool

そして、この戦闘を知った第三者が何よりも驚いたのは、このフリートの中核をなしていたのが「Hard Knocks(以下HK)」だったことだ。 HKについて、少し説明しておこう。
彼らはSYNDEの台頭以前、HAWKSと並ぶWHの覇者として君臨していた。
ヌル勢力の専売特許のように語られるXLサイズのストラクチャ「Keepstar」だが、これをNewEdenで初めて建造したのはHKだ。
WHでKeepstarを建造・維持することの困難さを考えれば、彼らがどれだけ強力な組織だったかが分かるだろう。
だが、今から約6年前、彼らのKeepstarは破壊され、メンバーの多くが離散・休眠することになった。
ヌル勢力によるEvictに敗れたのだ。
何の因果か、このEvictの中心にいたのが、今回の戦争でSYNDEが抱き込んだInitiativeだった。
それまで、HKやHAWKSのメンバーには、ある種の「驕り」があったと言ってよいだろう。
質量制限と日々切り替わるチェーンに阻まれ、大軍を送り込むのが難しいハイクラスWHの環境。
加えて、個々のプレイヤーの質や資金力の面でも、ワームホーラーには自らの生存圏を守れるだけの優位があると、当時の彼らは考えていた。 だが結局のところ、圧倒的な数の力には勝てなかった。
Initiativeは1年以上の時間をかけて準備をしていたのだ。
HKのホームに少しづつ、資材や艦船、パイロットを運び込み、来たるべき日まで塩漬けにしていた。
最終的に、InitiativeとGoonswarmを中心にした約1000隻の大艦隊がHKのKeepstarを包囲した。
この出来事は多くのワームホーラーに衝撃をもって受け止められ、HAWKSの防衛戦略にも影響を与えたのだが、それは別の機会に述べよう。
重要なのは、滅びたはずの古強者が、本格的に活動を再開し、SYNDE連合に弓を引いたということだ。
これはHAWKSにとって一筋の光明だったが、SYNDE連合の首脳陣は当初、HKの脅威をごく限定的なものだと判断したらしい。
対策を講じた痕跡や、懸念を示したという議事録は残っていない。
最大限に見積もっても、グリッドに現れるHKのパイロットは50人程度。
恐れることはない。こちらの手には、かつて彼らを葬り去った「数の力」がある、と。
SYNDE側がこの判断の誤りに気がつくのに、さほど時間はかからなかった。 ◆橋頭堡をめぐって HKの復活劇は一夜限りではなかった。
彼らはSYNDE連合と本格的に戦う準備を始めたのだ。
敵の拠点を攻めるにしろ、味方の拠点を守るにしろ、WHでの移動に制約が伴うのは前回述べた通りだ。
この問題を克服するための方法の一つが「rage rolling」と呼ばれる手法だ。
まず、目標のWHと同じクラスのWHにつながる固定穴を持つWHを確保する。
そこに艦隊や資材を運び込み、ストラクチャを建て拠点化する。
敵のWHを攻める際には、このWHの固定穴が目的のWHにつながるまで、穴を大質量で潰して更新し続けるのだ。
rage rollingを行う足場を確保するため、HKはC6クラスWHにつながる固定穴を持つWH(J115844)に拠点を設けようとしていた。
この動きを察知したSYNDE側は、すかさず建造直後のストラクチャへの攻撃を始めた。
対して、HAWKSはHKの拠点防衛のために約30隻のNighthawk艦隊を派遣。
駐留していたHKの艦隊と合わせれば60隻程度の艦隊となる。
この艦隊を確実に殲滅するため、SYNDEはストラクチャのタイマーが明ける直前までrage rollingを続けていた。
J115844にWHが開き次第、120隻の増援艦隊をなだれ込ませて勝負を決する算段だった。
そして、ストラクチャのタイマーが残り1時間を切った時、運命の天秤はSYNDE側に大きく傾く。
J115844へのルートがつながったのだ。
WHの開通はHAWKS側もすぐに察知し、穴の制空権をめぐるにらみ合いが始まる。
SYNDEの増援が侵入してしまえば、HAWKSの勝利は絶望的となる。
HAWKS側は迅速にこのWHを潰す必要があったが、SYNDE側は穴の周囲をバブルで覆い、それを許さなかった。
WHでのストラクチャをめぐる攻防は、このホールコントロールの結果に全てがかかっていると言っていい。
だが、ここでSYNDEは2つのミスを犯した。
一つは、フリートを迅速かつ一斉に送り込むべきところを、フリートのランディングが遅れたうえに、各艦バラバラにワープさせてしまったこと。
そしてもう一つは、敵の穴潰しを防ぐためのバブルが一瞬途切れてしまったことだった。
この瞬間、HAWKSのFCは、穴潰しのためにCV(軽空母)をランディングさせる決断をする。
敵の増援を絶つのと引き換えの、生きては帰れぬ片道切符である。
この動きに、SYNDE側の対応は遅れた。
くぐった穴の向こう側でCVのワープアウトを許したばかりか、戦闘サイトへと飛んだCVを追いかけた戦艦2隻が、NPCに撃沈されるという醜態をさらすことになった。

Upgraded Avengerはキャピタル艦が戦闘サイトにランディングすることでポップする強力なNPCだ。 SYNDEがこのCVを撃沈できたのは、CVが穴を往復して完全に潰し終えた後のことだった。
言うまでもなく、手遅れである。
SYNDEの増援の大部分は戦場にたどり着くことさえできず、勝利の女神はHAWKSへと寝返りを打った。 Battle Report Tool

NighthawkとVultureを中心としたHAWKS・HKのフリートに対し、Megathron海軍仕様を中心としたSYNDEのフリートは射程で劣り、ほとんど何もできないまま殲滅される憂き目に遭った。
HAWKS側の損害はCVを含めて約7.7Bisk。
対してSYNDE側の損害は約65Biskにもなった。 ◆諜報戦と戦争の趨勢 手痛い敗戦、と評したいところだが、SYNDE側はこの戦闘の結果を気にかけることなく、この後もHAWKSのファームWHへの攻撃に専念していく。
戦争初期のSYNDEの攻勢を支えた要因の一つに、ある関係者は「有能なスパイの存在」を挙げる。
HAWKS側の防衛計画の概要から、艦隊の現在位置、果てはBMフォルダに保存されたPINに至るまで、あらゆる情報はSYNDEの指導部へとリアルタイムで共有されていたという。
HAWKSの即応艦隊が動けば、SYNDE連合は必要に応じて増援を派遣するなり、撤退するなりできた。
戦争中盤以降にHAWKS側が特定するまで、このスパイは有効に機能していたようだった。
ただ、諜報戦は必ずしも一方的なものではなかった。
古参のプレイヤーならこう思ったはずだ。
「諜報活動ならば、それこそHKの専売特許ではないか」と。
実際、HKの参戦以降、急速にSYNDE内部の議事録や音声記録など、幹部クラスでなければアクセスできないような情報の流出が相次ぐようになる。
リークされた情報は艦隊の動きを直接うかがい知れるようなものではなかったが、ボディブローのように効果を発揮した。
SYNDEがヌル勢力を引き入れたことを快く思わないワームホーラーは少なくなかった。
ゴシップめいた内部情報のリークは、当初中立状態にあった各勢力に、HAWKS陣営への参加を促す働きをした。
ただ、諜報戦は無視できない要素ではあるものの、最終的に戦局の転換点となるのはオングリッドでの艦隊戦だ。
あるHAWKS陣営の関係者も当時、こんな言葉を残している。
「戦争の趨勢はDiscordで決まるわけではない。必要なのは宇宙での決戦だ」
次回は戦局が大きく動く契機となった戦闘について解説する予定だ。
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